蜀犬 日に吠ゆ

1901-09-11

[][]九月十一日 人間愛はすべて はてなブックマーク - 九月十一日 人間愛はすべて - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 いわゆる人間愛は、すべて神に対する強い愛という根底がなければ、単なる幻想であり、自己欺瞞にすぎない。なぜなら、そんな場合は、ただ最も愛すべきものだけを愛するか、自分を愛してくれる者を愛するかにとどまり、いつでも、この前提条件がなくなったと思われるときは、驚くほど早く、愛を減らすか、あるいはまったくそれをやめてしまおうと決心するからである。それとも、人間愛とは要するに、かなり冷淡な一般的行為をあらわす、やや美しい言葉にすぎない。それはむしろ、本来、猛獣ですら満腹すればその周囲に対して示すくらいの非攻撃的な態度のことである。

 このような人間愛では、一方に年々幾百万の人たちが精神的あるいは肉体的に餓死することも起りうるし、しかも、人はそれをひどく悲しむこともなく、また自分はほんのわずかな不自由をも忍ぼうとしないのである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫