蜀犬 日に吠ゆ

1901-09-14

[][]九月十四日 人間に対する信頼と神に対する信頼とは はてなブックマーク - 九月十四日 人間に対する信頼と神に対する信頼とは - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 人間に対する信頼と神に対する信頼とは、経験上、一致しない。むしろ、一方が他を排除するものである。魂にその信仰が十分そなわっていれば、神に対する信頼の方が一層確実である。この場合にも、たしかに苦難や心労がとり除かれるわけではない。それに、もしとり除かれるとすれば、それが私たち大多数の人びとにとって、その完成の道程であまりよいものではあるまい。「十字架の杖は、墓にいたるまでわれらの腰を打ちつづける。しかしそこでは、これも終るであろう。」けれども、すでにその前にすべてが堪えやすくなり、その結果は、すべてが有益なものとなる。このことについては、信頼してよろしい。

 しかし、人間はそのような生活を望まない。むしろ、より高い意志に全然従うことなく、また、それにかなった生き方にすこしも義務づけられないで、全く安定した、つねに享楽にみちた生活をしたいと願っている。人間の歴史あってこのかた、いやしくも考えられるかぎりの方法で、人間はそのような生活を求めてきた。しかし人類のなかのほんの小部分の人にさえ、そのような生活は得られなかった。まして、万人にとってそれが不可能なのはいうまでもない。万人の救いとなるものは、それとは全く別の道によって見出される。

 イザヤ書四九の一四―二六、五〇の六―一一、五五の一―一二、詩篇六三の八、同胞教会讃美歌一〇〇九番。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫