蜀犬 日に吠ゆ

1901-09-19

[][]九月十九日 この仕事のお礼は、彼からでなく、イスラエルの神から払って頂く はてなブックマーク - 九月十九日 この仕事のお礼は、彼からでなく、イスラエルの神から払って頂く - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

九月十九日

 私はかつて、無報酬で事務的な仕事を果してやったイスラエル人に、半ば冗談、半ば本気で、この仕事のお礼は、彼からでなく、イスラエルの神から払って頂くつもりだ、と言ったことがある。すると、その神はすぐさま私の言質をとらえて、それからしばらくの間に、私の生涯で最もつらい苦痛や心の痛手を、ほとんどひっきりなしに、私に贈ってよこした。そしてこれを書いている今も、私はその時の偉大な贈り物を正しく評価し、それをよく利用しようと、心をくだいている。その賜物がなければ、この本も書かれなかったことであろう。なぜなら、役に立つ著書と真の幸福とは、両方とも苦しい土台なしには得られないからである。不幸は、(逆説的に聞こえるかもしれないが)人生の幸福にぜひとも必要なものである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫