蜀犬 日に吠ゆ

1901-10-05

[][]十月五日 神にささげることのできる唯一の はてなブックマーク - 十月五日 神にささげることのできる唯一の - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

十月五日

 人間が神にささげることのできる唯一の贈り物は人間の意志であり、神が価値をおかれるのもこの贈り物だけである(その他のものはのこらず神の賜物である)、そして、人間がこの意志をすっかり神にささげるならば、その時、神は、こういうと不遜に聞こえるかもしれないが、神のみ心を人間のものとされ、その後は人間のすべての願いをかなえてくださる(もっとも、この祈願そのものも神によって導かれるが)。こうなれば、人間はただ祈願し、そして受け取ればよいことになる。また、神みずからが、詩篇八一篇一〇節の「あなたの口を広くあけよ。わたしはそれを満たそう」という言葉をもって、人間にそれを促していられる。

 なぜなら、われわれが神について多生とも知るかぎりでは、神はかぎりなく愛にみちたお方であって、神の願いは、自分が人間にとって大切なもの、いや、一切であることであり、人間の弱い本性をそこなわないかぎり、できるだけ多くのものをできるだけ多くのものをすでにこの地上において人間に与えることである。しかし、残念ながら、人間の弱い本性は一度にはかなりわずかな幸福にしか堪えられないのである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫