蜀犬 日に吠ゆ

1901-10-09

[][]十月九日 キリスト教の全体を簡単な言葉に はてなブックマーク - 十月九日 キリスト教の全体を簡単な言葉に - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 キリスト教の全体を簡単な言葉にまとめて理解したいと思うならば、それはヨハネによる福音書第三章にふくまれている。ところが、この教えについては、ほとんど二千年前と同じ誤解が、キリスト教世界のまん中にいるわれわれの間に、いまもなお存在している。

 今日でもやはり、どんな教会の正統的教義も、学問も、博愛事業も、それが人間の本性を変えないかぎり、われわれが真の生命にいたるのを十分に助けうるものではない。言葉をかえると、キリスト教の要求が、人間にとって自然になり、すべての自然なものと同じく、親しみやすく、自明なものとならねばならない。そうなると、人はもはやキリスト教の要求について思案することも、なにかを決意することも全くいらなくなり、逆にキリスト教に反することには自然に嫌悪をもよおし、それを我慢するのは骨が折れるようになろう。そこまで行くと、ヨハネが、明らかに自分の経験から、その第一の手紙のなかで主張していることが、つまり、神の命じ給うことはすこしも困難でないという、普通には信じられないことが、真実となってくる。なぜなら、すべて自然になってしまったものは別段困難ではないからである。

 以上のことをよく考えてみなさい。あなたもそこまで到達しなければならないし、また実際到達するでしょう。それが人生の目的である。そこに達するまでは、私とともに、安んじて、自分をただキリスト教の友であり、生徒であると考えなさい。そうすると、われわれはともかくも大へん善い道連れになれるだろう。というのは、私は自分の生涯で、完全に自然なキリスト者にあまり多く出会っていないからである。しかしそのようなキリスト者たち(全く真実に敬意を表すれば)は、カトリックとプロテスタントの両派にほぼ等分されており、また男性よりも女性のなかに多い。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫