蜀犬 日に吠ゆ

1901-10-12

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眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 どんなに堅固な信仰でも、時おり、くり返し、あらためて吟味され、いわば、ゆり覚まされねばならない。そうでないと、信仰は退化しがちで、単なる教団感情となり、しばしば盲人が足萎の手をひくことになる。それとも、キプリングの『パーラン・バガット』に見事に描かれているような抽象的瞑想となってしまう。

 このような信仰は、やがて、中世の神秘家たちにも見られるように、汎神論まがいのものに終るか、あるいは「沈黙と一切への帰入」を人間の至高の目標として説いた不毛のバラモン的知恵に帰着するかである。

 人間はつねに弱いものであるから、たまに一日くらい、信仰ある生活と普通の暮し方による生活の違いを、他人についてばかりでなく、自分自身において実際に経験してみて、信仰生活の価値をあらためて評価し直すのはよいことである。このようにしばしば吟味しないと、堅固な信仰は生れない。

 ヘブル人への手紙六の一一・一二、一二の三―六・二九、ヨハネの黙示録二の一〇、二一の六―八、イザヤ書三八―四五。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫