蜀犬 日に吠ゆ

1901-10-21

[][]十月二十一日 ヨブ記について。摘要。 はてなブックマーク - 十月二十一日 ヨブ記について。摘要。 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 ヨブ記について。摘要。ヨブはまず最初に、彼の友である神に、どんなことがあっても固く依りすがろうという決心に達して、心の落ち着きを得た。しかしその時は、まだ神を見ない前なので、ただそう信じて、この決心をするほかはなかった。そうでなければ、彼が苦難から解放されるとき、それは彼をそこなわずにはおかなかっったであろう。つぎに、彼はまだ神の義を見なかったが、それでも、善人に対しても悪人に対してもひとしく行われる世界統治における神の義を、もはや疑うことができなかった。最後に、彼は、自分の苦難について、そこにも神のみ心があるという説明しか与えられなかったけれども、その苦難をば神から授けられた善いもの、そして、いずれにせよ彼の救いに役立つものとして、心から受けいれなければならなかった。ヨブがこのように神の義に無条件に服従したのちは、――ある注解者がいみじくも言っている通り――「この信仰を確証された忍耐者(ヨブ)に対して神がゆたかな恵みを示されるのに、もはやなんの妨げもない。戦いはすでに終った。勝利の褒美はいまや彼に授けられて差支えない。」

 彼を誤解し軽んじた者たち、いわゆる友人たちに対しても、後になって、神はこの霊的に高められ義とされた人のために、赦しを用意された。彼自身がこのことに心を労する必要はなかった。むしろ彼は願ってもない状態におかれた。つまり、彼らはヨブの執成(とりな)しがなければ神に赦されないので、彼を訪ねてその執成しを求めざるをえないように、神によって仕向けられたのである。このようなことは、今日でもしばしば起るものである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫