蜀犬 日に吠ゆ

1901-10-24

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眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 とりわけすぐれた人びとでさえ、その生涯の大部分の間、彼らがまさに受けるに価いするよりもより多くの善きものを与えられている。そればかりか、大多数の人びとはおおむね、その全生涯にわたって実際にそうである。

 しかしわずかな人の場合に、神が彼らにより少なく与え、彼らを恩寵と寛容の立場でなくて、むしろ公正の立場で取り扱い始め、いわば神が思い切ってそうすることができるようになると――それでもすぐ彼らが絶望して神から背くことがなければ――、それはこの人びとの生涯における最も重大な時期の一つである。これは神が彼らに与える最大の誉れであるが、彼らはそれを少しも理解しえないで、拒むことさえしばしばある。預言者イザヤが「シオンは公正を持ってあがなわれる」(イザヤ書一の二七)と語ったのは、このことを意味する。また、キリストの受難による万人の救済ということの哲理的理解も、その点にある。ただし、この代理の義認は、やはりいぜんとして恩寵であって公正ではなく、その根本に横たわる問題は、実はまだ解決されていないのである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫