蜀犬 日に吠ゆ

1901-10-31

[][]十月三十一日 最も決定的な事柄 はてなブックマーク - 十月三十一日 最も決定的な事柄 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 ルカによる福音書一一の三六*1について。われわれに起る最もよいかつ最も決定的な事柄は、つねに電光(いなずま)のような性質をおびるものである。それは、恩寵の光線であり、別世界から来る光の輝きであって、たいてい、真理の洞察を与えるばかりでなく、同時に積極的な行為への励ましでもある。その時、すばやく決意して、すぐさま実行するのが、人間のなすべき務めである。そうでないと、恩寵の閃光はすぐ消え去ってしまう。しかし、われわれが決心すると、それはまるで金の翼をもった鷲のように、普通は越えがたい障害をも飛びこえて、猛然とわれわれを高く連れのぼって行く。天国への道は、普通の学修の法則では全く計れない、きわめて独特な道である。それを経験したことのない者は、だれも信じようとはしない。


   落 葉

    一

 晩秋は山や谷をさすらい

 木々のもみじが散ってゆく。

 この森の広間のどこにも

 小鳥たちの声はしない。


 ほどなく霜と雪とが

 色さまざまな森を蔽う。

 今度こそ悲しみもなく言えよう、

 「ああ、もっと早くこうなればよかったのに」と。


 私は生れつきの本性を敵(かたき)とした、

 もうそれは脱ぎすてられてしまった。

 いまや厳しい友である死がやってき、

 そそてその後から、まことの生命(いのち)が来る。


    二

 あなたのみ心はわたしの心となり、あせりのあとに平静がきた。

 ついにわたしの魂は平安に入った。

 離ればなれのものが結ばれ、欠けていたものが見出された。

 生命のいぶきがわたしに語りかける。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫

*1:「もしあなたのからだ全体が明るくて、暗い部分が少しもなければ、ちょうど、あかりが輝いてあなたを照らすときのように、全身が明るくなるであろう。」