蜀犬 日に吠ゆ

1901-11-07

[][]十一月七日 この上ない不幸に陥っても魂の核心は はてなブックマーク - 十一月七日 この上ない不幸に陥っても魂の核心は - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 ダンテの『神曲』地獄篇第五歌一二一行以下のフランチェスカ・ダ・リミニの「みじめな境遇にあって幸福だった日のことを思い出すほど苦しいものはない」という有名な言葉は、人生観の違いから生じるまったく違った結果を、実によく表している。しかし、この上ない不幸に陥っても魂の核心はそれによって少しもそこなわれず、かつての日々に自分にも豊かに与えられた善と美を、感謝をもって思い出すこともできる。けれども、その人の幸福がただ享楽にしかない場合には、上記の言葉は、だれでも老境にさしかかった人が痛ましくも経験する恐ろしい真実を含んでいる。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫