蜀犬 日に吠ゆ

1901-11-16

[][]十一月十六日 たいてい真の聖者については はてなブックマーク - 十一月十六日 たいてい真の聖者については - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 たいてい真の聖者については、残念ながら、その生涯の最後の時期のことがごく僅かしか知られていない。世に知られている彼らの内的経験のすべては、彼らの完成の段階より前の時期のことである。ただ時おり、晩年に語られた数少ない言葉が残っていて、それが彼らの心の内部へ一種の閃光を投じる。バイヨンのエリザベト(一六一三年生まれ)が晩年に語った美しい言葉もそうである、「私は自分がいのちの息吹のように軽やかなのをかんじます。」これは正しい一生を送ったならば、われわれの誰もが生涯の終りに当然述べうる言葉でなければならない。しかし現代のきわめて多くの老いた教養人が、彼らの哲学が古びてしまった今、かの聖女とはまるで違った気分に包まれていることは周知のとおりである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫