蜀犬 日に吠ゆ

1901-11-20

[][]十一月二十日 生涯中にしばしば、憂いの霊の訪れを はてなブックマーク - 十一月二十日 生涯中にしばしば、憂いの霊の訪れを - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 私もまた生涯中にしばしば、憂いの霊の訪れをうけて、今にも来そうな禍いについて空想をたくましくし、それに迷わされたことがあるが、そのような禍いは実際には起らないか、起ってもしのぎやすいものであった。時には、このような禍いを逃れようとする試みが、禍いそのものよりも、かえって結果において悪いこともあった。これに反して、神に信頼していると、つねに神は私を助けてくださった。およそこのような信仰がなければ、実際あるがままのこの世を渡ることは容易でない。しかし、この信仰があれば、しかもだれでも皆、立派に世を渡ることができる。

 本当にこのような信仰があれば、それ自身すでに一つの幸福である。というのは、信仰は喜びと確信とをもって魂を満たしてくれ、しかもこの確信が、信仰によって与えられる最後の賜物と同じくらいに、心を楽しくさせてくれるからである。反対に、ペシミズムは不幸そのものと同じように、人を不幸にする感情である。だからあなたは、このどちらかを選びなさい。それを選ぶのはあなたの心次第である。

 もしわれわれに少なくとも詩篇三二篇八・九節*1の教えに従おうとする心があるならば、われわれは生活をずっと容易にいとなむことができる。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫

*1:「私はあなたを教え、あなたの行くべき道を示し、私の目をあなたにとめて、さとすであろう。あなたはさとりのない馬のようであってはならない。また騾馬のようであってはならない。彼らはくつわ、たづなをもっておさえられなければ、あなたに従わないであろう。」