蜀犬 日に吠ゆ

1901-11-21

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眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 侮辱を恐れる心は、「お上品」な境遇に育ったすべての人たちにこびりついており、彼らがなしうる、またなすべき多くのことを、一般にしんじられているよりもはるかにひどく妨げている。新聞の非難などは、人生のわりに小さな不快事の一つにすぎないのに、彼らの中には、どんな新聞の非難をも恐れている人たちが大勢いる。そのような人が生涯に一度でも屈辱のなかに沈められ、そして無事に浮かびあがることがあるならば、それは神の恩寵である。これがイザヤ書四八の一〇*1の意味である。

 このようにして初めて、その人はものを恐れなくなり、とりわけ共和国では、ただの政党員になるよりは、もっとすぐれたことに役立ちうる者となる。

 ダンテ『神曲』煉獄篇第二七歌一六―二一行、天国篇第一七歌五〇―六九行、ダニエル書三の一六―三〇。


 現代に生きる人間は、右からも左かも彼の心をさそい、あるいは心を奪おうとする多くのものごとに対して、つねに素直にこう言わねばならない、「わたしはそういうすべてのものを得ようと努めてはいない。そのなかのどの一つも、私の魂を満たすことはできないだろう。私が求めているのはまことの慈愛である」と。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫

*1:「見よ、わたしはあなたを織った。しかし銀のようにではなくて、苦しみの炉をもってあなたを試みた。」