蜀犬 日に吠ゆ

1901-11-27

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眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 何事によらず、その事をくわしく知り、それに通じることは結局よい結果を生む。無知はその反対である。この世界をも、その色々な性質・要素をできるだけ完全に知ることによって、われわれのものとすべきである。

 しかし、人間の幸福の促進に直接の関係があまりにも少ないような事柄に、私は生涯を捧げたくはない。とにかく、享楽や単なる金儲けによりも、あまり必要でもゆうようでもないにしろ何かの学問に一生をささげる方が、どんなにましか知れない。

 とくに、きわめて数多い女性が、自分が無益な生活をしているという深刻な、しかも日々つのりゆく感情に苦しめられて、本当の心身の健康に到りえず、それどころか、今持っている健康さえも、そのことを絶えず気にするあまり損なったり、ついには全く失ってしまうということは、きわめて当然である。彼女たちに対して医師はなによりも先ずこう言うべきであろう、「働きなさい。あなた方も、他の人たちと同様に、働くのが使命であり、義務なのです。あなた方のちっぽけな自己よりも、もっと大きなことに興味をお持ちなさい。」さもなければ、どんな医者の助力も効果はないのである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫