蜀犬 日に吠ゆ

1901-12-06

[][]十二月六日 主にたより、主を頼みとする人は はてなブックマーク - 十二月六日 主にたより、主を頼みとする人は - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

十二月六日

 「おおよそ人を頼みとし肉なる者を自分の腕とし、その心が主を離れている人は、呪われる。おおよそ主にたより、主を頼みとする人はさいわいである。

 彼は水のほとりに植えた木のようで、その根を川にのばし、暑さにあっても恐れることはない。

 その葉は常に青く、日照りの年にも憂えることなく、絶えず実を結ぶ」(エレミヤ書一七の五・七・八)。

 この言葉は、最初考えるよりも、多くの真実をふくんでおり、これを信じる者はさまざまの悲しい人生経験を味わわなくてすむ。すくなくとも私は、これまでの生涯で、人間をあまり頼りとしたときは、そのつど、まもなくその支柱をとりはずされてしまった。これに反して、神への信頼が十分であったとき、それが裏切られたという場合を、私は一度も思い出すことができない。同胞教会讃美歌一七三番―一七六番。

 このことがほんとうに信じられるようになるには、長い時間がかかる。そして、それができる前に、人生はほとんど終わりかけている。しかし、そのとき初めて人間を真に愛しはじめる。それまでは、多かれ少なかれ彼らを恐れるだけである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫