蜀犬 日に吠ゆ

1901-12-09

[][]十二月九日 キリストが理解した通りの、いわば はてなブックマーク - 十二月九日 キリストが理解した通りの、いわば - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 キリストが理解した通りの、いわばキリストのキリスト教というものを真剣に考えて、素朴で善良な人間の手本になりたい人がだれかいてくれたらと、ふとそういう考えを抱くことがしばしばある。このような人になることは、現代においても、いや実は、昔よりも今の方がずっとより善いことであり、また、より容易にもなっている。

 そのような人になるために、並はずれた天分や教養は、すこしもいらないし、まして、なにか特別な地位などなおさらいらないだろう。真に善き意志をもち、真理への絶えまない誠実な追求心があれば、たしかに誰でも、例えば、特にすぐれた牧師と同じように、樵夫でも、そういう人になることができ、それによって隣人の道を照す光ともなれる。

 これ以上に真実なことはない。あなたが本当にそう考えるなら、生涯の決定的瞬間にダビデ王に起ったことが、いくらか違った仕方で、あなたにも起るであろう。ある声が「あなたがその人です」(サムエル記下一二の七)とあなたの耳に言うにちがいない。あなたはぜひとも、あなたにできること、そしてわれわれの時代や国民にとって必要だと考えることを実行しなさい。それ以外の目的はすべて棄ててしまうがよい。実際、その他の目的は、あなた自身にも比較的価値が乏しいと思われるだろうし、また、ほかの人たちによって十分処理されてもいるからである。

 そのような人間になることの意味がわかりもしない他の人がどうしてそうするだろうか、またその意義を認めているあなたがどうしてそれを免れようとするのか。――それではいけない。あなたのこの第一の義務を果たしなさい、他のすべてのことはすてておくがよい。そして、今日からすぐ始めなさい。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫