蜀犬 日に吠ゆ

1901-12-12

[][]十二月十二日 現代生活がもたらすあらゆる不安と動揺の はてなブックマーク - 十二月十二日 現代生活がもたらすあらゆる不安と動揺の - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 イザヤ書三二の一七・一八、「正義は平和を生じ、正義の結ぶ実はとこしえの平安と信頼である。わが民は平和の家におり、安らかなすみかにおり、静かな休み所におる。」

 現代生活がもたらすあらゆる不安と動揺の代りに右の成句に言われているような状態を望まない者があろうか。常に変りない、このような晴れやかさ、実はむしろ、喜びにみちた状態こそ、この地上における唯一の願わしい生活であり、また天国への道理にかなった唯一の通路である。人間が老年や病気で死ぬときに普通いだくような感情のままで、直ちに天国に入ることはできない。しかしこのような平和と喜びにみちた状態は、死に先立って早くから、人間の内に存在しうるものである。そして死ぬときには、しだいに衰えゆく肉体というその外的「障害」が、ただ死によってとり除かれるにすぎない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫