蜀犬 日に吠ゆ

1901-12-14

[][]十二月十四日 没落した一家や、その価値と尊敬を失った民族がふたたび はてなブックマーク - 十二月十四日 没落した一家や、その価値と尊敬を失った民族がふたたび - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 サムエル記上七の三。これは、すでに昔から、没落した一家や、その価値と尊敬を失った民族がふたたびよく立ちあがるための手段である。しかも、その他のどんな奮起の仕方よりも、またどんな軍備的方法によるよりも、はるかに確実な手段である。しかしそのためには真剣さがなければならない。単に教会の形式や宗派、あるいは単に形だけの礼拝ではいけない。その結果は、出エジプト記二九の四五・四六の神の言葉の通りである。今や、すべての文明諸国、とりわけ大国が、このような道を選ぶかどうか、それによって生きるか滅びるかの問題に直面している。その端緒はすでに現われている。しかし、これはわれわれも必ず直面せざるをえない運命である。

 少なくとも現在では、「大衆をキリスト教に復帰させる」ということはもちろん問題にさえならない。その上、すこし前までは存していた信仰への外的強制手段が、今ではすべてなくなっている。だが、われわれはそれを残念だとは決して思わない。むしろ、キリスト教は今やそれ自身の力で、つまりその内的卓越性によって、人類の一部の人びとを新たに獲得するにちがいない。しかし、残りの部分はこれまで以上に強く拒むであろう。このために、文明諸国民の間の考え方全体の分裂が今よりも一層大きく、かつ公然と現われるであろう。このような全く自発的な考え方がこれまでよりもはるかに純粋に明確な表明をとる場合、両方の世界観の結果も、個々の家族や民族において、やがて歴然と現われるであろう。

 申命記三〇の二・一一―一九、三三の二六―二九、マタイによる福音書二四の三―一四、マラキ書三の二・三・一七・一八、エレミヤ書二の一九。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫