蜀犬 日に吠ゆ

1901-12-27

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眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

 仕事や用事で多忙な世界にいると、われわれは正直にこう言うことができるのはもっともだ、「わが魂はもだしてただ神をまつ。わが救いは神から来る。」(詩篇六二の一)――享楽にばかり耽っていてはなかなかそうは言えない――それとは反対に、単なる静寂と孤独の生活だけで、神と共にある力強い生活がそれと結びついていなければ、それは誘惑にたいする護りにも、完成への道の助けにもならない。

 この地上で最もよいのは、この二つの状態が互いに交代することである。

 それゆえ、修道会などの宗教的団体は、なんらかの実践的な仕事を持たねばならないし、忙しい活動家は静寂な時間を必要とする。そして神は彼らにそのような静かな時が必要だと見ると、病気を通じてそれを贈られる。

 真のキリスト教は、あらゆる宗教や哲学のなかで、静寂主義からも、俗事への心酔からも、人をまもる唯一のものである。このことを完全に知る人は、この教えがきっと天国から来たものだと言うにちがいない。実際、この地上ではこのようなものは成長しなかった。すっかり形式主義的におちいったユダヤ教からも、また、当時の古典的ギリシア・ローマの文化からも。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫