蜀犬 日に吠ゆ

1901-12-29

[][]十二月二十九日 「この世とその営み」についての不平や愚痴は はてなブックマーク - 十二月二十九日 「この世とその営み」についての不平や愚痴は - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第1部〉 (岩波文庫)

十二月二十九日

 「この世とその営み」についての不平や愚痴は、およそこの世で最も無益なものである。われわれは次のように言ってもよい、そのような世間人になりたくないという敬虔な人びとは、彼らがあるべき、またありうる人間に完全になりさえすれば、社会的弊害はいくらでも、おのずから改善されるであろう、と。しかし、不平やお説教だけでは、弊害はいっこうに改められない。キリスト教が明らかに意図したのは、神の庇護と主が常に側近くいられることとを信じて安らかにその道を行き、できるだけ多くの善をなし、また、教えるよりもむしろ実例をもって人を励ますことで自分たちの真理を広めるような、そういう人々の集まりでもあった。われわれの将来に迫っている、キリスト教の新しい改革も、そういう方向でなくてはならない。この世界も今や、久しい以前から見られなかったほどに、そうした傾向を示している。現在欠けている点は、ただわれわれ自身にある。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第一部 岩波文庫