蜀犬 日に吠ゆ

1919-03-02

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 人びとの交わりにおいては(従ってとりわけ教育の場合でも)、本当に大切なことは、相手の好意を得ることである。ところが、このことは――残念ながらこう言わねばなるまいが――実に大多数の人たちの場合、子供も大人も、未開人も文明人も、仰々しい挨拶や忠言などでよりも、むしろささやかな贈物でもする方がうまく目的を達せられる。贈物は、半ば、あるいはすっかり不和となった人たちの間でも、不思議に和解のはたらきをすることがよくあるものだ。

 贈物に一番適しないのは、花屋や温室で求めた嵩張った、したがって高価な花束である。これはすぐ萎れて、もてあましものになる。贈物として一番よいのは、もし季節がゆるすなら、自分で摘んだ野の花の小さな花束か、庭でとった一輪のばらの花か、そのほかなにか日用の品などである。まあ一度、そんなものでためしてみるがよい。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫