蜀犬 日に吠ゆ

1919-03-03

[][]三月三日 思案したり、心配したりせずに はてなブックマーク - 三月三日 思案したり、心配したりせずに - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 思案したり、心配したりせずに、祈りかつ働くことが、どんな困難な状況にあっても、正しいやり方である。

 諸民族を、そのまちがった道から神への信仰へつれもどすために、苦難の時代がやって来なければならない場合に、普通神はまず幾人かの個人に苦難をなめさせ、神の助力を経験させ、そのあとで、これらの人たちがその他の人びとに向かって、自分たちの経験に基づく故に確信をもって教え説くことができるように導き給う。そうすれば、この先駆者たちは、一般の人びとの苦難の時にも勇気を失うことなく、なお救われる見込みのある者を励ますにちがいない。こうして間もなくもみ殻はよい穀粒から飛び散ってしまい、試煉は終りをつげることになる。

 現代において、このことと関連して大切なのは、美的世界観が空しいものであり、宗教から離れては道徳が成り立ちえないという確信と、歴史的な、ユダヤ教的・キリスト教的な宗教観念が真理だという確信である――ただし、この宗教観にはただある修正が必要であるが。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫