蜀犬 日に吠ゆ

1919-03-04

[][]三月四日 たしかに、「夜はなにびとの友でもない」。 はてなブックマーク - 三月四日 たしかに、「夜はなにびとの友でもない」。 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 たしかに、「夜はなにびとの友でもない」。夜になると、眼前に立ちふさがるすべてのものが真っ黒に見え、だれの生活にも必ず伴うさまざまな困難が、興奮した精神の前に、山のようにそそり立つ。たしかに一番よいのは、一晩じゅうぐっすり眠り通して、明るい朝になって初めて目を覚ますことだ。

 けれども、それができなければ(これは、少なくともある年齢に達すれば起りがちで、それも段々ひんぱんになるだろう)、あなたは眠られぬ夜を心配とたえまない思案とについやさずに、ゆるぎない確固とした信念をうるためや、翌日ただちに実行できるような、また、ものごとを捗らせるような決心のために、利用するがよい。このためには、しばしばこころの平静と完全な体の休息とが役立つものである。

 たしかに多くの神経質な人や、また一般に不眠の人は、考えが散ってまとまらぬ悩みに陥りやすい。――彼らには、一晩じゅう「眠り通す」のが、何よりもよいことだ。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫