蜀犬 日に吠ゆ

1919-03-16

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 道徳的世界秩序については、われわれの理解のおよびがたいものがあるが、あえてその二、三の法則をあげれば、次のようなものである。

 一、悪は最初うわべだけの勝利を得て、凱歌をあげるように見えるが、やがて必ず破滅する。

 二、この世におけるまことの善は、それが十分強くなるまでは、つねに世間やそのいろいろな機関の好意や承認をうることはできないであろう。それにもかかわらず、善は活動をつづけ、そのような静かな孤立のなかで成長してゆく。だから、将来正しい働きをすべき者はだれでも、生涯に一度、いや、ときには幾度も、世間的成功を伴う生活か、まことの信仰か、そのいずれかの選択を迫られることがある。

 ヨハネによる福音書五の四四。

 三、神は比較的小さな事(神の尺度から見て)は、神のしもべ以外の人たちを用いて処理させることがある。彼らはそれを、神のしもべと同じように、いや、しばしばもっとうまくやることさえある。

 四、真に善き人が負う最大の十字架は、実はむしろ彼の弟子や信奉者である場合がある。というのは、彼らはしばしば彼を全く理解しえないからだ。かえって彼の敵は、ずっと早くから、またもっともよく、彼を判断することを知っている。つぎに、敵はまず彼を誘惑しようとする(ルカによる福音書第六章)、それが成功しないとき初めて彼を攻撃するのだ。この場合、誘惑される時の方がずっと危険な段階である。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫