蜀犬 日に吠ゆ

1919-03-20

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 愛がなければ、この世界は、どんなに多くの自然美や芸術や学問が存在していても、まことにみじめな、不満足なものにすぎないだろう。人間は賢明であればあるほど、ますます強くこのことを感じ、いち早くそれがわかるにちがいない。ただ愚かな者だけが、生の享楽の緑の牧場で主人顔ができる間だけ、いましばらくたのしげに駆けまわっているのだ。

 また別の種類の愚かな人は、神への愛がなくても、人間たちを、すくなくても二、三の人を「永遠に」愛し、そこに生涯の幸福を見出すことができる、と信じている。とにかく、この態度は比較的高尚な考えの人たちの陥りやすい欠点であるが、それがやや卑俗な形をとる場合ですら、この方が神の赦しを受けられやすい。ルカによる福音書七の四七*1

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:「それであなたに言うが、この女は多く愛したから、その多くの罪はゆるされているのである。少しだけゆるされた者は、少しだけしか愛さない。」