蜀犬 日に吠ゆ

1919-04-02

[][]四月二日 あなたはいわゆる社会政策とか、平和運動とか はてなブックマーク - 四月二日 あなたはいわゆる社会政策とか、平和運動とか - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

四月二日

 あなたはいわゆる社会生活とか、平和運動とか、これに類する事柄にあまり身を入れすぎないようにしなさい。それらはすべて、たしかに興味ある、またたいてい賞讃すべき努力ではあるが、しかしそれによって社会問題も、その他のどんな問題も、解決されるわけではない。この世に存在する、あらゆる種類の、おびただしい量の悲惨時は、それによってほとんど何ほども減らないだろう。結局、人類はただより多くの愛によってのみ、しかも、だれでもみな直接にその「隣人」から始めねばならぬあの個人的な、本当に強い愛によってのみ、助けられるのである。この愛の精神こそは、また真のキリスト教の精神でもあるが、これが世を救うのであって、その他のすべてはこれと反対に、やたらに声のみ高い無用事にすぎないことが多い。世間の人たちは、これ以上、あやまった理想を追わなくてすむために、このことをもう少し明らかに覚(さと)らねばならない。その間に、われわれ自身が、まず第一にだれでも一人ひとりで、また自分との関係において、これまでと全くちがった考え方に改め、そして権利や現実政策をもってではなく、また「大きく全体のために」働こうなどとしないで、本気に愛をためしてみることから始めようではないか。大きく全体のために働くのは、なるほど世間の人の前で、はるかに大きな名誉をもたらすであろうが、しかし神の前や自分の良心の前では、そうではなく、しかも、しかも「この世の君」であるサタンの支配はいぜんとして変りがないのである。そこでこの世の君は、自分を当然恐るべき理由があると思われる人びとを、ひとり残らず、大急ぎで、団体や教会や派閥のなかに引き入れようと、たえず全力をつくすのである。そうすれば、これらの人びとは、彼サタンにとってもはや危険性の大部分を失うことになるからだ。ルカによる福音書一〇の二五―二八*1

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:「するとそこへ、ある律法学者が現われ、イエスを試みようとして言った、『先生、何をしたら永遠の生命を受けられましょうか』。彼に言われた、『律法にはなんと書いてあるか。あなたはどう読むか』。彼は答えて言った、『《心をつくし、精神をつくし、力をつくし、思いをつくして、主なるあなたの神を愛せよ。》また《自分を愛するように、あなたの隣り人を愛せよ》とあります』。彼に言われた、『あなたの答えは正しい。そのとおりに行いなさい。そうすれば、いのちが得られる』。」