蜀犬 日に吠ゆ

1919-04-03

[][]四月三日 人生において何が最も困難であるか はてなブックマーク - 四月三日 人生において何が最も困難であるか - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 人生において何が最も困難であるか、あなたはそれを知りたいと思うか。元来、この問いに対しては、ただ個人的な答えしか与えられないものである。だが、一般的な答えをするとすれば、こうであろう、すなわち、神から遠ざかることがそれである。しかしこのことも、すべての人にとって同じ程度に感じられるわけではない。私にとって最も困難だったのは、我欲を克服することでも、さらに広い意味で自分の感覚・感情への執着にうち勝つことでさえもなく、また信仰のことでもなく、人間に対する諦めや彼らのよい評判を断念することでもなかった。これらのことは私にはむしろ反対にいつもあまりに容易なくらいで――それがかえってわたしの欠点でもあった――、そうではなくて、最も困難なのは忍耐であった。人間の最もよい性質は、ただゆっくりと、しかも多くの忍耐によって初めて、伸びて行くものであり、また悪や利己心はなかなか急には退散しないものである。そこでわれわれが、人間を相手にして、彼らを助けて進歩させようとするとき、ほとんど超人的な忍耐をもっていなければならない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫