蜀犬 日に吠ゆ

1919-04-04

[][]四月四日 神にそむく者がこの世で罰せられることがない はてなブックマーク - 四月四日 神にそむく者がこの世で罰せられることがない - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 あなたは、神にそむく者がこの世で罰せられることがないといって、あまり深く嘆かないがよろしい。愛のない魂が、神に見捨てられて闇に住まねばならぬことは、一つの宿命であって、これはその厳しさにおいて、とうてい外的な刑罰とはくらべものにならない。「そうだ、でも、罰せられた者は、それをそのようには感じない。」私の経験によれば、それを感じないのはただ一部の人たちの場合だけである。そうでなければ、彼らがあのように、やたらと娯楽や刺戟や気晴らしを追求したり、ついには酒やモルヒネにまで手を出したりして、自分のみじめさを忘れようとはしないだろう。

 もしわが国でも多くの人びとが、なんでもすべて高貴なもの、豪華なものを讃美するほどに無知でなかったならば、神に背く人たちは自分の悲惨さをもっとはっきり感じるであろう。だから、彼ら神に背く人たちは、いつも比較的お人よしの連中の彼らに対する驚嘆にささえられて、わずかに元気を取りもどしているのである。悪人が落ちる地獄とは、いつか彼らがそこへ行って見ると、ただ彼らと同じ悪い仲間ばかりしかいないということであろう。これは、さすがの悪人たちも苦痛なしには耐えきれまい。この世において悪の力が強いのは、全く、事にあたって生ぬるい人たちの恐怖心と不信仰にもとづくものである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫