蜀犬 日に吠ゆ

1919-05-04

[][]五月四日 われらの兄弟N氏とか姉妹X嬢が はてなブックマーク - 五月四日 われらの兄弟N氏とか姉妹X嬢が - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 われらの兄弟N氏とか、姉妹X嬢が、まことのキリスト者であるかどうか、あなたは知りたがっているようだ。

 私はマタイによる福音書七の一・二*1の言葉を前にして、これに答えるのをさし控えよう。しかし、あなたは全体として真のキリスト教に対する一つの基準を、同じ福音書の第五章から第七章のうちに見出すことができる。主自身それを七の二〇・二一*2にはっきり示されている。これに較べると、教会とか、何かの信条とかに対する「信仰」は、なんの値打ちもないものである。ただ単純に軍隊的な感情にしたがったにすぎない、ある異教徒(カペナウムの百卒長)の信仰でさえ、キリストによってイスラエル第一の信仰として宣言されている(マタイによる福音書八の五―一〇)。これは今日もなお変りないものである。

 だから、マタイによる福音書第五章から第七章までを読んで、正直に、「そうだ、これは宗教の最もよき、最も真実の、永遠に価値ある神髄である。私は多分それを実行しているとはいえまいが、しかし実行することを願い、また真面目にやってみようと思う、」と言う者は、真のキリスト者である、たとえその人が現在どの教会にも属していない者であっても。また、そんなことは不可能だと考えたり、あるいは、すでに古臭くなって、もはや今日の生活条件には全く合わないものだと思う者は、次のステッドの激しい言葉をかえりみるがよい、ひとは自分の魂を株式取引所で失うと同じように、教会でも失うおそれがあるものだ、と。あなたも、あなたがたの信者の集会で自分の魂を失わないように気をつけなさい。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:「人をさばくな。自分がさばかれないためである。あなたがさばくそのさばきで、自分もさばかれ、あなたが量るそのはかりで、自分にも量り与えられるであろう。」

*2:「このようにあなたがたはその実によって彼らを見わけるのである。わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、ただ、天にいますわが父の御旨(みむね)を行う者だけがはいるのである。」