蜀犬 日に吠ゆ

1919-05-05

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 ピリピ人への手紙三の一三―二一、四の六・七―一二・一三・一八。

 特に目立つことは、主自身ばかりでなく、その解説者であり第一の伝道者であったパウロも、来世の生活の様子については、ほんのわずかしか語らず、すでにこの地上の生活を未来の生活の準備としてきた人びとに、来世では疑いのない善福が与えられるという確実な期待を抱かせることで満足していることである。それだからわれわれも、やはりそれで満足すべきである。肉体に原因するすべての虚弱、不快、心配、苦悩などを免かれて、肉体なしの生活が行われるということは確かである。そしてそのことだけでも、本当に私たちの心を、来世に対する切なる憧れで満たすにちがいあるまい。しかしまた、来世では、神に一層近くなり、新しい精神的進歩をなすであろうということも、まちがいなく想定してよろしい。同じように、それにふさわしい、よろこばしい活動、しかも地上の労働に伴う重荷や性急さの不安のない活動が、われわれの運命となるであろう。だが、その他のことはすべて確実ではない。この地上で交わったすべての人と再会できるか、またこの世での私たちの個性をそのまま保持するかどうかも、不明である。たしかに後者は私たちの希望の一つにちがいない、さもなければ完き希望とはいえないだろうから。だが、地上のものの記憶は、それが来世における個性の保持に必要と思われないかぎり、私は断念するであろう。だから、善き最終目的に到達するために、なおこの世でできるだけのことをするのが、最もよい道である。イザヤ書五二の一二、五五の一二・一三。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫