蜀犬 日に吠ゆ

1919-05-09

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 いわゆる「神の探究」については、列王記上第一九章(特にその一一・一二節参照)にこの上なく見事に描かれている。それには、人生目的に対する絶望や火や嵐がつねに伴いがちである。しかし、正しいものはおだやかな説き勧めの声をもって訪れてくる。あまりに早く、まだ初歩的段階にありながら、他人に呼びかけようとする人たち――しかも、ニーチェにいたるまで、本当の声を待ちきれなかった人たちがいつもなんと多かったことだろう――彼らは結局誤った哲学や宗教学説をうち立てることになった。そして、これらの学説は、同じような段階にある多くの人びとに出会うとき、これらの思想家のうちに宿る激しい情熱によって、その影響力を及ぼすのである。だが、パウロのように、貸すかな神の声に向かって開かれた耳を獲得するまで、辛抱し抜く者はきわめてまれである。けれども、あらかじめ疾風怒濤の苦悩の時期を経なければ、人の心は十分に開かれることがない。そこで、確固不抜の信念が生じないで、ただ教義の習得と口まねになりがちである。こうなると、それこそ「成果が挙らないこと」を嘆く「働きのない」説教師や著述家が生じる羽目になる。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫