蜀犬 日に吠ゆ

1919-05-11

[][]五月十一日 あまりにたくさん書きすぎた はてなブックマーク - 五月十一日 あまりにたくさん書きすぎた - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 あなたはおそらく、取扱う事柄がまだ十分熟しない前に、あまりにたくさん書きすぎたのでしょう。世間ではそういうのを、「すっかり書きほす」とか、「生きつくす」とか言っている。そしてその例として、ゲーテやその他の詩人たち、特にバイロンをも、挙げたりする。こういう生き方によって、周知のような才気あふれる情熱的場面の描写が生れるが、しかし自分に役立つような人生哲学は決して生れない。そこで、このような人びとは、老年にいたるまでついにそういう哲学を持たずに終るのが常である。ずっと晩年になってからも、彼らは往々、青年時代にふさわしいような情熱的興奮に陥ることがある。するとそれさえも彼らの追随者によって、すばらしいことだと感嘆されるのである。

 あなたは広く世間の人に呼びかける前に、まず自己の成熟のために、あなたの内的形成に時間を与えなければならない。もっとも、今日では、やっと学校を出たばかりの連中が猫も杓子も、世間に呼びかけたがるのだが。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫