蜀犬 日に吠ゆ

1919-05-29

[][]五月二十九日 われわれが出会うそれぞれの人のために はてなブックマーク - 五月二十九日 われわれが出会うそれぞれの人のために - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

五月二十九日

 われわれが出会うそれぞれの人のために、われわれは何かしてやったり、言ったり、考えたりする責任がある。

 次のようなことをためしてみなさい、世間の人たちは、それをお上品と考えるからか、出会う人に対して、親しみの眼差しを向けもせず、冷淡に、そればかりか軽蔑をもってやりすごすことさえあるが、あなたはそうしないで、もしあなたがなにも言ったり行ったりできにくい場合は、少なくともその際なにか善いことや親切なことを考えてやるがよい。しかしこのような場合はたいへん多いものであり、それがまたあなたの内的進歩のためのよい機会ともなるだろう。なぜなら、人びとはしばしばわれわれにつかわされた使者であり、神が通例用いられる不断の郵便配達人であるからだ。だが、いうまでもなく、神に反する霊の使者であることもある。

 ところで、あなた自身は人びとに対して、どちらの霊の使者であり、郵便配達人であろうか。これこそ、大切な問題である。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫