蜀犬 日に吠ゆ

1919-06-08

[][]六月八日 世間はほっておきなさい はてなブックマーク - 六月八日 世間はほっておきなさい - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 世間はほっておきなさい。世間はいまちょうど、パウロの手紙に記されている時代と同じような段階にある。テサロニケ人への第二の手紙二の一一―一三、テサロニケ人への第一の手紙五の五―九*1・一六・一七、ピリピ人への手紙四の四―七。われわれの務めは、いま燃え上がっている、敵味方の誤りと誤りとの戦いの渦中にまき込まれることなく、それによって正しい態度を示すことである。この戦いからは当分まだたいしてよい結果は生じないだろう。けれども、この戦いのなかから救われようと救助船の船べりにすがりつく難破者たちを受けいれるために、真のキリスト教はつねに存在しなければならない。

 さて、われわれはいくども生活と努力との新しい出発をくり返さねばならないが、いよいよその最後の新しい出発がやってくる。いまやあなたは神学書や哲学書を読みふけることを、いわばすっかりやめてしまってよろしい。もう実行にふさわしいほど十分に力がついている。実行こそは、いつか未来の国において、われわれの唯一の務めとなるであろう。そこではもはや、教会も書物も説教もなく、ただ生活と実行とがあるだけであり、この地上では苦しい努力の成果であったものが、そこではもうわれわれの自明な本性となっていることであろう。「主よ、わたしたちはあなたの救いを待ち望む」(創世記四九・一八、詩篇一〇九・二六)。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:「あなたがたはみな光の子であり、昼の子なのである。わたしたちは、夜の者でもやみの者でもない。だからほかの人々のように眠っていないで、目をさまして慎んでいよう。眠る者は夜眠り、酔う者は夜酔うのである。しかしわたしたちは昼の者なのだから、信仰と愛との胸当を身につけ、救いの望みのかぶとをかぶって、慎んでいよう。神はわたしたちを怒りにあわせるように定められたのではなく、わたしたちの主イエス・キリストによって救いを得るように定められたのである。」