蜀犬 日に吠ゆ

1919-06-17

[][]六月十七日 社会主義のもっとも厭うべき点 はてなブックマーク - 六月十七日 社会主義のもっとも厭うべき点 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 社会主義のもっとも厭うべき点、そのためだけでも私がこの主義に賛同しかねるのは、社会主義が嫉妬を人間の行動の主な発条(ばね)にしており、また実践活動においてもそれを信奉者に教えこんでいることである。嫉妬や、それと密接な関係のある意地悪な満足は、貪欲とならんで、まだ改善されない人間の本性の一番悪い性質である。いかんながら言いそえなければならないのは、これらの性質が他の領域においてもふんだんに見受けられること、しかも諸国家みずからがその実例をしめしていることである。

 なぜなら、国家が実際政治と呼んでいるもの、また互いに監視しあい、相手のどんな勢力拡大に対してもたえず妬ましげな対抗の努力をもって応じるよう駆り立てられるのは、大がかりな嫉妬よりほかのなにものでもない。嫉妬がトルコやシナを保全せしめ、新たな戦艦の建造をうながし、また、現今の戦争に対してもその責めを負うべきものだ。自分の属する国家が、さけがたい害悪、また許さるべき措置だなどと日々公言してはばからぬ事柄を、どうして個人が邪悪だと考えそれを避けねばならないのだろうか!

 いわゆる大政策は、まさしくキリスト教とは明白に矛盾するものである。その代表的政治家はおそらく二つの魂をもっているにちがいない、一つは私用のために、一つは公用のために(ビスマルクを見よ)。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫