蜀犬 日に吠ゆ

1919-06-29

[][]六月二十九日 神から離れたことのために生じる不幸 はてなブックマーク - 六月二十九日 神から離れたことのために生じる不幸 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 神から離れたことのために生じる不幸のなかにも、何かある善きものを見出すこと、つまり、ちょうど塩が辛い混ぜ物として全体の腐敗を防ぐように、不幸のなかに改善か予防手段かを見出すこと、これこそ正しい人生観である。

 ところが世間の味方、とくに新聞の考え方は、全くその反対である。彼らは悪をかなり手軽に扱い、あらゆる神的なものから時おり離叛することを「近代的世界観」だと見なし、また一方、それに対する神の罰をいつも不可解なものと考え、しかもそれがすぎ去ればたちまち忘れてしまうのである。

 すべての人が思いのまま生を享楽することが、おそらく彼らの理想であろう。しかしそういう理想は、その性質上、ただ楽園において、しかもその条件にぴったり合った人びとにだけ許されることで、あるがままの世界では望んで得られないものであろう。

 文明諸国の政府はすべて、ひたすら完全にこの目標を達成しようと努めている。彼らは正義や真実を求めるのではなく、ただ彼らの所有と勢力の持続をできるだけ妨害されないことを、あるいは、むしろそれらをさらい拡大することを求めているのである。

 だから、政府の指導者たちがどんなに賢くても、一向にうまく行かない。そしてだれもが、元来戦争を望まないにもかかわらず、つねに平和は戦争からわずか間一髪をへだてているにすぎない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫