蜀犬 日に吠ゆ

1919-07-16

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 あなたはどんな本を一番書いてもらいたいと思うか。この場合、聖書の各篇は問題外としよう、同じくダンテも競争外におき、なお最後に、ひごろ何をもっとも好んで読んでいるかといういくぶん違った問題をも、除外しよう。

 私の答えは、『トム伯父さんの小屋』、デ・アミチスの『クオレ』、テニソンの『王の牧歌』である。そのあとに、ゲーテ、シラー、グリルパルツァー、カーライルの幾冊かの本がつづき、ずっとあとに数冊の学問的な書物、とくに、たとえばカントやスペンサーがやって来る。古代の書物では、厳密にいえば、エピクテトスだけである。

 このような本当にただ本質的な問いだけで検討すると、さすがに尨大な文献の量もしだいに篩(ふるい)にかけられて、ついにはごく僅かなものにしぼられてしまうのは、奇妙なことである。それだけに、われわれは一旦全体を通観して、自分の十分根拠ある判断を得たのちは(もっともそれはたしかに半生を超える努力を要するかもしれないが)、すべての真に価値あるものを知るようにし、一方ずっとつまらぬ書物に時間を浪費しないように、いよいよ真剣に決意すべきであろう。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫