蜀犬 日に吠ゆ

1919-09-08

[][]九月八日 キリスト教の最初の伝道者 はてなブックマーク - 九月八日 キリスト教の最初の伝道者 - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 キリスト教の最初の伝道者であり、文筆家であったパウロの手紙は、疑いのない歴史的真実性をもち、したがって個々の点において神に決定的意義をもつことがらの(たとえば復活について、コリント人への第一の手紙一五の六*1のごとく)、現存する最古の証拠であるばかりではない。さらに、さまざまの教会や個人にあてたこれらの手紙は、多くの重要な教示や助言を含んでいる。これらの言葉は、それにまさる主みずからの言葉(コリント人への第一の手紙七の一〇―一二参照)に次いで、神の霊によって完全に満たされた人の言葉として、われわれにも意義を持つのは当然である。最後に、これらの手紙は、肉体的な弱さをもち、多くの迫害をうけながらもなお、ついには真に幸福な人となったひとりの人の実例として、われわれを強くはげましてくれる。その後にあらわれたどの宗教的著述にもまして、これらの手紙は、多くの激励と慰めと助言とを含んでいる。だから、それは、宗教改革者たちにとっても、当時の重大な危機にのぞんで、よき道しるべともなったが、おそらく、またいつか、そのような役目をはたすであろう。ただ、これらの手紙は、それよりもややおくれて成立した福音書の上位に置かれてはならない。福音書はなおより高い型(タイプ)のものであり、たしかにもっと偉大な精神的集中力をもって記されたものである。

 イザヤ書五三の一〇―一二。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:「(復活のキリストは)そののち、五百人以上の兄弟たちに、同時に現われた。その中にはすでに眠った者たちもいるが、大多数はいまもなお生存している。」