蜀犬 日に吠ゆ

1919-09-18

[][]九月十八日 この世の悪や悪人に対しては はてなブックマーク - 九月十八日 この世の悪や悪人に対しては - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 およそこの世の悪や悪人に対しては、真理と愛とをうまく混ぜあわせてかからねば、とても対抗できない。悪人と同じ武器をもって彼らに勝とうとしても、とうてい勝目はない。彼ら自身の縄張りのなかでは、ちょうど巨人アンテーウス*1の昔話にあるように、彼らは非常に強い。だが、ほかの領分では、たちまち勝手のちがった霊の力を感じ、それにくらべて自分の弱さを知るものだ。――この点においても、種々雑多の人びと、たとえば、評判の悪い取税人、罪の女たち、当時の賢者、敬神家、学者、欲ばった群衆、国王や総督、主を否んだがなお救われたペテロ、「見すてられた」ユダ、などに対するわれらの主の態度は、いかにも主らしい特色が現われている。現代においても、このように多くの困難な状況に陥りながら、しかも、家族や教会や国家、あるいは友人たちに頼らないということは、だれにでも容易にできることではない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:アンテーウス(あるいはアンタイオス)、ギリシャ神話の巨人。母なる大地から離れると力が抜け、それに足をふれると、またたちまち力が湧いたという。