蜀犬 日に吠ゆ

1919-09-26

[][]九月二十六日 この罪の女を訴えてきた人たちは はてなブックマーク - 九月二十六日 この罪の女を訴えてきた人たちは - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

九月二十六日

 ヨハネによる福音書八の一―一二*1。この物語は、実にさまざまな注解を生み出した。この罪の女を訴えてきた人たちは、キリストの言葉によって、「一時的に良心を呼びさまされた」ものの、あとで、彼らの最初の驚き(もっともこの驚きはむしろ彼らの名誉となるだけだが)から我にかえると、キリストに対して、そのいささか寛(ゆる)すぎる道徳を非難したであろう、と思われる。それでも、この物語は特色あるものであって、もしこれが主の行跡の一つとして保存されていなかったら、さぞ惜しまれるであろう。この物語は、いわゆる愛のために罪を犯した人びとに対して、われわれのとるべき態度を示している。すなわち、厳粛をまじえた同情の態度である。われわれのあいだで普通に行われているように、そのどちらか一方だけではいけない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫

*1:「律法学者やパリサイ人たちが、姦淫の現場で捕らえられた女を引っぱってきて、キリストの意見をたずねた。彼をためして、訴える口実を得るためである。するとイエスは『あなたがたの中で罪のない者が、まずこの女に石を投げつけるがよい』と答えた。これを聞くと、彼らは年寄から先きに、一人びとり出て行って、女だけがのこった。イエスは女にむかって『あなたを罰する者はなかったのか』と問い、かさねて『わたしもあなたを罰しない。お帰りなさい。今後はもう罪を犯さないように』と言った。」