蜀犬 日に吠ゆ

1919-10-07

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 悪は、攻撃を受けるとかならず抵抗する。これは全く自然なことである。しかし(次のことはあまり理解されないことが多いが)、善が全く「非攻撃的」に出ようとする場合ですら、悪はやはり自分を防御せずにいられない。というのも、実はたいてい、悪の代表者が弱いためにほかならない。なぜなら、光がただ照すだけで、闇はただちに退散しなければならぬからだ。つまり、闇は光とならんで存在しつづけることができないので、光の存在そのものが、つねに闇にたいする攻撃となるわけだ。それゆえ、闇はかならず光を排斥しようとつとめる。それはいろんな方法でおこなわれ、ときには成功することもある、ことに光のにせものを使うことによって。つまり、たいていの人においては、彼らの光そのものが、実は一種の闇なのだ。特に、多くの哲学や、さまざまな種類のいわゆる「啓蒙主義」が一般にそうである。それらは光ではなく、光のように見えたり、また光と思われたりする、一種の闇にすぎない。

 キリストの出現は、かつて暗いこの世にあらわれた最大の光であった。その時以来、この光はもはや全く消え去ったことがない。しかし、それは時にあぶなげにゆらめくこともあるが、かならずそのあとまた一段と静かにもえつづけるにちがいない。

 ヨハネによる福音書一の六―一二、ルカによる福音書一一の五二。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫