蜀犬 日に吠ゆ

1919-11-26

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 近代のある著述家は、全く正当にも、こう言っている、「人間に信仰が始まるのは、一つの要求からだ」と。つまり、決して認識からではない、というのである。ただし、不幸についての認識、とりわけ、まったく信仰なしに人生をおくる自分自身の不幸についての認識は、別である。自分以上の高いものに、自分の意志をささげようとしない人は、真に信じることはできない。それどころか、いわゆる信心ぶかい人であっても、たとえささいなことにせよ、ふたたび自分の意志を持ちはじめるやいなや、ふしぎにも信仰はたちまちやんでしまう。ところが、自分の意志と生命とを、彼が信じたいとおもう神にささげることをかたく決意した人は、信じることができるし、このことをただちに経験するであろう。

 信仰の発足は、そして、その際ただ一つその人に要求されるものは、一つの意志行為である。それから先きのことは神がなし給うのである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫