蜀犬 日に吠ゆ

1919-11-27

[][]十一月二十七日 自分にたいしてもまた他人にたいしても十分真実で純朴な態度で はてなブックマーク - 十一月二十七日 自分にたいしてもまた他人にたいしても十分真実で純朴な態度で - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 もしわれわれが、自分にたいしても、また他人にたいしても、十分真実で純朴な態度でのぞむ習慣を身につけようとし、また実際そうすることができたならば、非常な進歩をとげるであろう。しかし、人間は自分自身の力にもとづいてそれをすることは、とうてい不可能である。まず、神の学校で、神自身に対して真実で、誠実になることからはじめねばならない。こうしてはじめて、しだいに真理そのものに対して心をひかれるようになり、それに身をゆだねることを習うのである。

 しかし、他人の不正直に対して人がどんなに敏感であるかを知ったなら――しかも、これはおそらくだれでお自分自身で容易に経験できるだろう――、われわれはずっと速く正直になるにちがいない。ひとは他人の不正直にひどく敏感だという事実から、人間を欺くということは全く不可能だと言いきってもよいとさえ私は思う。もっとも、他人のエゴイズム、とくに虚栄心を刺戟してあざむく場合は別である。これは、彼らのもって生まれた良識のあらゆる警告に対して彼らを盲にし、つんぼにするからである。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫