蜀犬 日に吠ゆ

1919-12-09

[][]十二月九日 聖母マリア崇拝を、カトリック教徒から はてなブックマーク - 十二月九日 聖母マリア崇拝を、カトリック教徒から - 蜀犬 日に吠ゆ

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 永いあいだに徐々に成立した聖母マリア崇拝を、カトリック教徒からふたたび奪いとることはできないし、またプロテスタントの信者にそれを強制することもできないであろう。このことが、教皇制とならんで、両教会の合一をさまたげている主な原因である。ほかのすべてのことは、現代では、まことのキリスト者なら、一致しうるであろう。そして今日、両教会のなかで多くの人びとが、なかば無意識に、十六世紀の宗教改革をこのような合同改革の趣旨で修正しようという考えに傾いている。しかし、(カトリックにあっては)聖母崇拝というのは、プロテスタントの救世主にたいする非常に親しい関係にかわる、埋合せなのである。というのは、カトリック教徒にとっては、救世主はもはやほとんど特別な人格を意味しないからである。そこで、彼らは別のだれかを必要とする。なぜなら、真に親しい愛をともなわぬ信仰はひとの心を満足させないし、また悟性にとってもつねに薄弱な存在でしかないからである。最後に、教皇制であるが、これは、ちょうど聖アウグスティヌスやトマス・アクィナスがこころに描いたような教会、また、神にたいして純粋に個人的な、つまり集団的でない関係を決して持ちえない多くの人たちにふさわしい教会を徹底的に完成した制度だといえよう。だから、宗教改革でどちらの教派も勝利をおさめなかったのは、おそらくよいことであったろう。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫