蜀犬 日に吠ゆ

1919-12-16

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眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

眠られぬ夜のために〈第2部〉 (岩波文庫)

 人びとの感謝を決して期待してはならない。だいたい人間は、高等動物ほどにも、恩を知るものではない(『眠られぬ夜のために』第一部二月二十六日参照)。だから、あなたは、人間として隣人に善いことをしても、それらすべてはみずからのため、また神のためになされたものであり、それで済んだものとして、ただちにあなたの記憶から消し去るがよい。

 幾年かののちに、あなたはそのような善行の結果に気づくことが時には起るが、しかし、あなたの生涯の仕事の大部分は、過去のひろびろとした大洋のなかに一見跡形もなく消えてしまうものだ。われわれのすべての行為に最後の審判が行われ、行為にふさわしい賞罰があたえられるという考えによって、実際、まだだれひとり改心した者はないように思われる。われわれは、人間の本性が善を好み、悪を厭うように仕向けねばならない。そうでなければ、われわれの教育の全体がその目的を達したとはいえない。

ヒルティ著 草間平作・大和邦太郎訳『眠られぬ夜のために』第二部 岩波文庫