蜀犬 日に吠ゆ

2008-02-10

Nap

[][]シャムタンティ 第3日 21:53 はてなブックマーク - シャムタンティ 第3日 - 蜀犬 日に吠ゆ

プロローグ

 フレドリック*1は、いらいらしていた。もう何度も剣劇の音で浅い眠りを覚まされていたからだ。次の冒険のために、なるべく体力は温存しておきたいのに、しぶしぶ起きあがるしかない。

 森の端にぶら下げた寝袋から滑り降りたフレッドは平原の方へ歩き出した。昨晩から、いつ果てるともしれぬ決闘を続けている二人の騎士の元へ。

「あのう、すみません。」

 フレッドは、決して礼儀を知らないものではない。

「すみませんが、もう少し静かに戦ってくださいませんか、ええと、控えめに言って、私のほんのささやかな権利に尊重がほしいのですけれども。」

 騎士たちは、鎖かたびらや肉片や骨片や、その他いろいろなものを地にまき散らしていたが、それに対して起こりうるだろう生態系の変化に配慮をするつもりはさらさらなかったし、ましてや、他者の人権に配慮するつもりなどなかった。そもそも、今回の舞台は中世ヨーロッパをモチーフにしているのであり、それは人権などと無縁の世界である。すべての「権利」と称するものは単なるわがままであり、それを通すためには「実力」が必要なのだ。

「あのですね……」

 ガキーン、ガキーン

「もう少し向こうで……」

 ガキーン、ガキーン!!

「おまえらいいかげんにせいよ!」

 フレッドはついに魔法を使うことを決心した。師匠から、私的なことで魔法を濫用することは禁じられているものの、これは実際に環境被害であることがはっきりしたからである。

 ゆっくりと森の端まで戻る。

「警告したぞ」

 木の枝づたいに寝袋を目指す。

「おまえたちが悪いんだからな」

 寝袋に入る。

 恐るべき「真鍮の振り子」を取り出す。

「NAP!」(「NAP!!!!!!!!!!!!!!!!!」)

 数秒のうち、フレッドは熟睡に落ちていった。

*1:これから君がつきあわなければならない男の名前だ。