蜀犬 日に吠ゆ

2008-07-16

[][][]運命が裏切る~~ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』上 岩波少年文庫 21:30 はてなブックマーク - 運命が裏切る~~ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』上 岩波少年文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 ローマ=ブリテン物語第三部。

 主人公の身分はだんだん低くなりますね(第1部:筆頭百人隊長、第2部:軍医と百人隊長、第三部:十人隊長)。そして、その境遇もますます悲惨になります。

 375年、ゲルマン民族大移動ののち、テオドシウス帝の二子は帝国を東西に分領(395)し、ヨーロッパは戦国の世を迎えます。ブリテンにはすでにローマ正規軍は撤退し、ライン地方の騎兵隊が駐屯するのみ。これでは迫り来るサクソン人(海のオオカミ)をはじめとするゲルマン所属に対抗するには限度がある……

アクイラ 宿命をさまようもの

 海のオオカミに故郷の農場を襲われ、ジュート人の奴隷に落ちる。(「ドラクエ5」みたいですね)

 たった一つの希望、そして絶望は殺されずにさらわれた妹フラビアの身の上なのですが。

アクイラはいった。「赤ギツネめの命令で、おまえの仲間は、おれの家を焼き、父を殺した上に、妹をつれだしたんだ。これが忘れられるものか。」

 少年はちょっとだまった。それからソーケルは、まるでわびごとでもいうようなぎこちない態度でいった。

 「おれ、妹ってもったことないや。」

 アクイラは砂丘の上に生えた雑草が風になびいているのをにらんでいた。「妹がもう死んでりゃいいがと、おれは神に祈ってるよ。」アクイラはいった。もしそれさえはっきりすれば、フラビアにとっても、アクイラにとっても心の平和が得られるだろう。しかしアクイラは、もしそうだったら、じぶんがせめてもの生きがいとしてきたことが失われてしまうだろうと、心の奥底で感じていた。

ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』上 岩波少年文庫

 希望は、妹が無事でいること。絶望は、妹が殺されてしまっていると知ること。アクイラは絶望にすがるが、現実はあまい現実を軽々と裏切る。フラビアとの再会はアクイラの心を刺す。

「さあ、おとうさまの指輪をおとりなさい。そしてわたしを許すように努めてちょうだい。」

 アクイラは妹の肩から手をおろすと、指輪をとり、自分の指にはめた。

 これまでアクイラをささえていた、心のまひしたような状態は、だんだんさめかけていた。そしてまっ黒な、ひどい惨めさが心をつらぬいた。今の今まで心の奥のどこかで、アクイラはフラビアがきといっしょにくると思っていた。これまでに起こったことを、もうかわらぬものとして受け入れてしまってはいなかったのだ。アクイラもフラビアとおなじように一本調子でいった。

「もしおまえの助けでおれが逃げおおせ、おとうさんの指輪までもらっていくのなら、おれはおまえを許さなくちゃならんだろうな、フラビア。」

 ふたりはそれ以上もう一言もことばをかわさず門のほうへ進んでいった。

ローズマリ・サトクリフ『ともしびをかかげて』上 岩波少年文庫

 

第一部の感想

「友情、努力、そして敗北!!」??サトクリフ『第九軍団のワシ』岩波少年文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ - 片割れ星第1号

第二部の感想

信じるもののために戦う??サトクリフ『銀の枝』岩波少年文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ - 片割れ星第1号