蜀犬 日に吠ゆ

2008-10-15

[][] 井上祐美子『臨安水滸伝』中公文庫 20:45 はてなブックマーク -  井上祐美子『臨安水滸伝』中公文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

臨安水滸伝 (中公文庫)

臨安水滸伝 (中公文庫)

 面白かった。物語最大の謎があっというまに解明されてしかし解決しないままというのは消化不良な気もします。続編があるのでしょうか。しかしそれをのぞいても非常に楽しめました。

 南宋最大の懸案といえばなんといっても主戦派と和親派の確執。

 芳樹チルドレンであれば清廉剛毅な岳飛に殉じて淮水をわたるのが筋なのでしょうし、宰相秦檜とはあくまで対立するべきなのかよく知りませんが、まあとにかく小泉首相言うところの「奴隷の平和は選ばない」的な物語にすべきなのでしょう。しかし井上先生は秦檜を奸雄としては描きません。晩年を迎えた秦檜は老獪ではあるものの大局を見据えた政治家としてとらえます。これだけの男が最後のボスであるからこそ、あのグダグダな対決が合ったのでしょう。


 風生、資生、基生の三兄弟に関して言えば、基生のキャラが薄すぎるので続編での活躍を期待したいものです。戦闘力も一段低いし。


 一つ気になったのは、題名。当然この物語はあの「水滸伝」とは何の関係もありません。井上先生ほどの人が、いまさら「水滸伝」の権威に乗る必要もないような気がするのですが、命名の意図は那辺にありや。