蜀犬 日に吠ゆ

2008-10-24

[]柴田元幸『生半可な学者』白水Uブックス 20:44 はてなブックマーク - 柴田元幸『生半可な学者』白水Uブックス - 蜀犬 日に吠ゆ

 翻訳者柴田氏のエッセイ。

生半可な学者―エッセイの小径 (白水Uブックス)

生半可な学者―エッセイの小径 (白水Uブックス)

 翻訳家でもあり英語教師でもある柴田氏はもちろん言葉にこだわり、日本語と英語の違いにこだわるわけですが、それだけでなくて現代アメリカ文壇などの話もあって興味深いです。(とはいっても発表当時1988~92頃の時事ネタですが。)


 若手研究者が大学で職を得ることに汲々とする構造が、文壇にもコピーされている話。

〆切は駆け足でやって来る

 それと似たようなシステムが、近年は創作の分野にも広がりはじめている。最近出てきたアメリカの若手小説家で、ひとまず「純文学作家」と分類される人々のほとんどは、大学院の創作科の出身である。彼ら若手作家たちの経歴は驚くほどよく似ている。(1)創作科に入って一流ないし二流ないし三流の作家=教師に師事する。(2)授業で書いた作品を教師に認められ、その口ききで文芸誌に掲載される。(3)作品がいくつかまとまって短編集として出版されたり、O・ヘンリー賞にノミネートされたり公共機関・財団の奨励金を獲得したりして、一流ないし二流ないし三流の作家としての地位を確立する。(4)かくしてみずからも、大学の創作科教師の職を得る。――と、作家/出版社/作家志望の学生、という三位一体の再生産システムができ上がっているのだ。一昔前までは、創作科というと、誰も読まない(読めない?)食えない純文学作家の救済の場、というイメージが強かったが、ここ数年来、それがにわかに「食える作家を生産する場」に変貌しはじめているのである。

柴田元幸『生半可な学者』白水Uブックス

 しかし結局、そういう作品て大衆に読まれてベストセラーになったりはしないそうで、ものすごい閉じた世界に、税金が注ぎ込まれているのでは国民の理解を得られなくなりそうですが、21世紀ではどうなったのでしょうね。