蜀犬 日に吠ゆ

2008-10-26

モモノヒコタロウ

[][]友達になれる~~佐藤さとる『コロボックル童話集』青い鳥文庫 21:17 はてなブックマーク - 友達になれる~~佐藤さとる『コロボックル童話集』青い鳥文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 講談社の『佐藤さとる全集』全12巻以降に発表された作品をふくむコロボックル作品2冊。挿絵はもちろん村上勉先生。

コロボックル童話集 (講談社青い鳥文庫)

コロボックル童話集 (講談社青い鳥文庫)

コロボックルと時計

 人間とコロボックルが出会う。それだけの話。


コロボックルと紙のひこうき

 コロボックルが人間にコンタクトをとる。それだけの話。

 世話役がヒイラギノヒコになると、人間とのコミュニケーションを許可するようになりました*1。そのためコロボックルたちはこうして人間を観察したり時には接触してみたりする、あるいはイレギュラーで人間との関わりを持つようになるわけですが、そうした背景があってはじめてわかる話ではないでしょうか。


コロボックルのトコちゃん

 トコちゃんを主人公にした連作。トコちゃんはまだ子供なのでおにぎり山を出ることはできません。山の暮らしと小さな冒険。


ヒノキノヒコのかくれ家

 人間の「カツ大工」、クラさんとコロボックルのトギヤがコンタクトをとる。しかしクラさんは、建て主のお嬢さんとコンタクトをとろうとしているかも知れないのであったのでなかったのであった。


人形のすきな男の子

 裏切りと、謀略と、友情と、打算。そしてそれを見ているだけのコロボックル。


百万人にひとり

 「不思議な眼をした男の子」習作。


へんな子

 「小さな国の続きの話」習作。アパッチ先生って美人だったとは知りませんでした。


[][]歴史の中の小坊師たち~~佐藤さとる『小さな人のむかしの話』青い鳥文庫 21:17 はてなブックマーク - 歴史の中の小坊師たち~~佐藤さとる『小さな人のむかしの話』青い鳥文庫 - 蜀犬 日に吠ゆ

 メタフィクションでもある「小さな国」。コロボックルが、自分たちの国に伝わる伝承をまとめたという形式で語られる、もう一つの日本史。ちゃんと大きな人の日本史とリンクします。

きっかけの話

 ツムジイが語り手であること、本書は語りそのものではなく佐藤氏の編集が入ったことが明かされる。

あとがきにかえて

 今までに登場した人物(小人物、大人物あわせて)の後日談。および作者見解など。


青い鳥文庫版あとがき

 2005年。1985年以降はコロボックルの話を書いておらず、せいたかさんから消息を聞くことも疎遠になっているという。寂しいものです。

[][]君たちはどう生きるか~~パオロ=マッツァリーノ『コドモダマシ』春秋社 23:02 はてなブックマーク - 君たちはどう生きるか~~パオロ=マッツァリーノ『コドモダマシ』春秋社 - 蜀犬 日に吠ゆ

コドモダマシ―ほろ苦教育劇場

コドモダマシ―ほろ苦教育劇場

 感動しました。滂沱の涙。2リットルのビィルの所為もあるかしれませんが。(酔うと泣きのスイッチがおかしな所で入る。)

 子供のこまっしゃくれた疑問を、大人が詭弁で封じこめるという体裁。「反社会学」をひっくり返してギャグにしたという所でしょうか。後半はだんだんとそうでもなくなりますが。

 どちらかというと極論をフリに、現実をふまえた結論をオチにしているために、意表をつかれるという感じはなく、素直に読んで理解できる内容となっているので、安心して感動できます。


 とくに、私が普段思ってはいても口が下手で言うことができないようなことをズバリいってくれることに感動。本を読んでためになるのは、なにも「新しい知見」だけではなくて「上手な表現」であると考える私にとっては素晴らしいことです。

 たとえば、「学校の勉強って、役に立つの?」という疑問。

「最近の若い人はなにかというとすぐ、使えねえ、っていうんだよな。あれ聞くとお父さんはイラッとする。じゃあお前は一体どれだけ使える人間なんだ、って問いつめたくなる。役に立たない、使えないからといって、安易に切り捨てるような人間こそが、使えないヤツだ」

「父と子のための役に立つこと」

 私も、こういう質問には「お前が生きてることは何の役に立っているの?」と聞いてやりたい。質問を質問で返したがるアホです。あと、この質問は私は絶対にされたくないので、「学校の勉強(にかぎらずそのたもろもろ)は役に立たないじゃん!」などという台詞を言うことを避けています。

 子供が変な絵を描く!心の乱れだ!とテレビで偉い人が言ったことに対して、

「いまのこどもの描く絵が二十年前より幼稚なのは、こどもがお絵かきをしなくなって、練習不足の子が増えたってだけのことだと思うよ。体力が低下しているとわかったら、もっと運動すればいいんだし、成績が悪けりゃ勉強時間を増やせばいい。料理ができなきゃ練習すればいい。勉強やスポーツや料理ができなくても心の問題にはしないだろ。なのに、なんでヘタな絵を描く子だけは、絵の練習をさせてもらえず、心のせいにされちゃうんだろ。おかしいよな」

「父と子のための器用・不器用」

 まあこれは図画工作業界の立場もあるような気がします。上記の「何の役に立つの?」という話につながると思いますが、こどもに絵を描かせるのは「情操教育」だ、というお題目を唱え続けているうちにお題目と本質を同一のものであると勘違いし、「絵が下手」→「情操が正常に育まれていない」→「キチガイ認定」となっているのだと思います。絵を描かせることでその人の心理不安を考察する心理学手法はありますが、戦争に巻き込まれたPTSDを見つけるのに使ったりと、極限状態の人を対象にしているわけで一般論に広げるには無理があるように思えます。(絵を描かせる心理テストを母里は信用していません。)

 だから、絵が下手なのが問題なら絵を描く練習をさせればいいと思います。スケッチが下手ならスケッチの練習、デッサンが狂っていればデッサンの練習、色彩が単調ならその訓練。どうして図画工作をなにか特別扱いしたがるのでしょうねえ。

「雑学クイズや学校の勉強、テストには、問題を作った人が用意した答えが必ずある。だから、知識を増やせば正解できる。だけど、おまえも社会に出て働けばわかるだろうけど、オトナの仕事には、正解ってものがないんだ。テストのテクニックみたいに、解ける問題だけ解いて合格ってわけにもいかない。解けない問題を任される。ときには問題も自分で探さなきゃいけない。自分の目で現実を見て、なんでだろう、どうすべきだろうと自分の頭で考えて行動できなきゃいけない。雑学では仕事はできないんだよ」

「父と子のための雑学ブーム」

 お父さん、ステキすぎます。

 これはむしろ大人たちの方が分かっていないのではないでしょうか。とくにTVのワイドショーなど見ていると、正解を選べば正義と平和と繁栄が実現するかのような物言いをする人がたまにいて鼻白んでしまいます。「政府は何とかしろ」という言いぐさを私は民主主義の敗北だと思っていて、何とも為らないことに調整をつけるのが広義の「政治」というものではなかったかと思ってしまいます。「教科書ガイド」で数学と英語の予習をするのはどうかという話もしたいのですが今回はしません。


 きりがないのでこの辺で。


 といいつつ追加。本書は各章のテーマに応じたブックガイドがついていて、お父さんの詭弁とか本音にはきちんと典拠があると(ある場合には)明示されているのも非常にクオリティが高くて感動。しかし、ガイドに示された本のうちの何冊かは、昔欲しくて本屋をさまよった記憶を蒸し返すようなラインナップで、それがまた涙を誘う。

*1:星からおちた小さな人